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【発言録】 地方対話 後半

発言録 地方対話 後半1日本側司会
香山 充弘氏(学校法人自治医科大学理事長、元財団法人自治体国際化協会理事長、元総務省事務次官)

 後半は観光と経済の連携について話したい。

発言録 地方対話 後半2基調報告
山田 啓二氏(京都府知事)

 観光や経済の連携急速に深まっていくことを理解していたが、実際にそれを目の当たりにすると、それをこなせているか自信を持てないこともある。現在の日本では観光を受け入れる側としての態勢の問題が生じている。中国人に観光を楽しんでもらえる環境の整備が必要である。

発言録 地方対話 後半3基調報告
夏 徳仁氏(遼寧省委員会常務委員、大連市委員会常任書記)

 日中間の貿易関係が深化している今日、大連は、中国東北地域における重要な経済拠点となっている。今後、大連は世界の市場の新たなニーズの変化に適応するため、グリーン経済に転換を遂げようとしている。これまでは企業との協力が多かったが、これを転換し、日本の精神的な都市との交流を深めていきたい。

発言録 地方対話 後半4基調報告
溝口 善兵衛氏(島根県知事)

 島根県の海外への直接投資は、決して多いわけではないが、最近は、29件ほど直接投資をしている。その中で中国が18件で最も多く、外国企業との提携でも、やはり中国が最大で44件ほどである。外国人観光客については年間に3万人程で、最も多いのが中国からである。また、日中の経済協力については企業同士で進む流れがあるが、市場のメカニズムでできない分野の交流がある。こうしたメカニズムが十分働かない分野について、公的主体が支援を行っていくことが大事である。

発言録 地方対話 後半5孫 尭氏(黒竜江省人民政府副省長)

 黒竜江省は非常に雪が多い地域である。それを利用した祭りも行われており、札幌やケベックと並び称されている。また、中国で最も大きなスキー場も完備している。今後は調和を保った新しい資源の開発などをメインに、北東アジアの国々との協力を強化していきたいと考えており、日本ともインフラについて協力していきたい。

発言録 地方対話 後半6坂本 森男氏(千葉県副知事)

 千葉の人口は620万で、京葉工業地帯があり、新日鉄、JFE、電力ガスなどの企業がある。このような大きな企業が立地しているにもかかわらず、一方で農林水産大国でもあり、水質も向上している。こうした分野に大いにサポートを行っていきたい。また、現在、成田空港は大きな転換点にある。日本の国際貨物の68%を扱い、国際旅客の56%を受ける、世界のゲートウェイとなっている。これは、年間発着回数が20万回のときの数字であり、現在は2万回増えている。また、今年7月に成田スカイアクセスが整備され、成田が更に日本のゲートウェイとしての役割を果たせるものと期待している。

発言録 地方対話 後半7牛 文元氏(中国科学院国務院参事)

 これまで、日中の協力が中央政府の間で行われ、次第に相互に信頼が生まれて積極的な 成果が上がってきた。そしていま、地方・草の根レベルにまで達している。この分科会の存在もその表れと言えるだろう。今後は、交流を効果的なものにするためにも、しっかりと目標を定め、環境、産業等の分野で協力を進めていきたい。

発言録 地方対話 後半8増田 寛也氏(株式会社野村総合研究所顧問、元総務大臣)

 日中の経済協力関係は今後も確実に進むだろう。しかし、日中間では商慣習に違いがあるし、産業についても土地柄によって変わってくる。お互いの関係がウィンウィンになるように障壁を取り除くことが必要になっていく。そのために、商慣習などの問題でトラブルになった時、それを解決することができる人材を確保・育成することが、お互いの健全な活動のためにも必要になってくるだろう。そうした分野に留学生を活かすのもよいのではないだろうか。もう一つは、日本の中小企業が中国で活動していくために、行政が共同で取り組んでいくことだろう。

発言録 地方対話 後半9高 建国氏(中国地震局地質研究所研究員)

 浙江省は、台風の上陸が多いため、防波堤を作ることを決めたのだが、それによって2000年以降、3回は全く被害を出さなかった。そのおかげもあって土地価格が上昇している。このように、防災への投資は非常に費用対効果が高い。私は防災への知恵が十分でなく、投資も不十分であると感じている。日中の協力としては、防災への投資を増やすためにも、実際に上げた実績を紹介するなどして交流していくことが重要ではないだろうか。

山田氏
 今までは中国への進出は大企業中心であったが、これからは中小企業も重要となってくる。地方公共団体同士の間で、マッチングが出来るような仕組みを築いてはどうだろうか。

夏氏
 都市の発展には、共通したルールのようなものがある。先進都市から学ぶことは多々あるし、お互いに学び合うことも重要である。中国側から日本に経験やノウハウをお伝えすることができると思う。日本と中国では産業構造が非常に異なる。日本は非常に優れた構造をもち、一方で、中国には労働力などの資源が豊富である。足りないところをお互いがカバーし合うのが望ましいのではないか。中国としては日本の優れた環境技術を学びたいと考えている。

香山氏
 観光には経済効果が注目されるが、それだけでなく本当にお互いの信頼感を生みだすのに役立っているのではないかと思っている。なので、積極的に交流を進める必要があるだろう。

坂本氏
 国内で需要不足の状態にあるため、中小企業も海外に新たな市場を開拓していく必要がある。しかし、現状ではどこに何を売ればよいのかがわからない、あるいは海外に対応していくだけの人員が不足している、ということがある。先ほども話題となった中国との間のマッチングなども利用し、パートナーシップを結んでいく必要があるだろう。

孫 尭氏
 食料品の加工などで、日本企業の技術と連携することには大きな可能性があると考えている。しかしながら、現状では日本企業の進出は十分ではない。日本の中小企業と開発区との間の交流が成功し、マッチングによってパートナーが見つかることを期待している。我々としては、日本企業の技術を欲している。

増田氏
 出会いの場、マッチングの場の提供は重要だと思う。それから、岩手県知事時代、大連とも色々な交流があった。例えば、岩手大学は、大連理工大学と共同で研究センターをつくった。モノづくり、工学系の分野がこういうときに強い。大学の交流は非常に重要だろう。自治体と、大学が協力し、ベンチャー的なところも含めてモノづくりの場を提供していくことが重要だと思っている。

牛氏
 地方の中小企業のための管理委員会のようなものを作る、という提案は出来ないだろうか。

香山氏
 予定の時間となった。今回の貴重な議論によってヒントを伺うことができた。明るい展望が開けたと思う。

親カテゴリ: 2010年 第6回
カテゴリ: 発言録