. 言論NPO主催「東京-北京フォーラム」公式サイト - 2009年開催 第5回

メディア対話前半①(基調報告)

程曼麗氏(北京大学ジャーナリズム・コミュニケーション学院副院長):

 中国側代表として世論調査について分析をお話しします。2005年からこの調査は始まりました。
 中国での調査は、今年の5-6月に、世論調査は1589人、学生1008人に対して、中日関係に対する態度、歴史問題などに対する考え、両国の将来や対日イメージについて調査しました。

 小泉靖国参拝や歴史教科書問題によって、日中トップの接触が激減しましたが、両国政府の努力や温家宝首相の努力によって、両国関係は少し回復してきています。両国の戦略互恵関係によって、両国に対するイメージは2008年にもさらに良くなりました。中国の国民の対日イメージはよくなってきています。しかし一方で、日本の中国に対する印象は去年が最低でした。

 「両国関係を妨げるもの」については、中国では歴史問題と領土問題が上位2位を占めています。今後の中日関係の見通しについては、「よい」と答えた人数が増えています。市民の楽観的態度は増加しており、悲観的態度は大幅に減少しているといえます。両国の国民は中日関係の将来に、慎重ながら楽観的な態度を示しています。両国の発展について、両国のアジア地域の発展に協力できると見ている割合は多く、両国をライバルと見ている人よりも多くなっています。

 そして地球温暖化問題については、「日本が責任をもってやるべき」という人が多いという結果になりました。
両国の人民の間には、この温暖化問題については食い違いがあります。経済危機についても両国の間の人民には食い違いがあるといえます。両国の国民は経済危機後の中国経済に対して比較的楽観的です。

 食の安全安心の問題については、市民の不安は著しく高まっています。

 両国問題の将来については双方共に楽観的な人が増えています。両国の国民は双方を重要な国として位置づけています。

 また今年の調査では、民間交流について両国の人々が高く評価しています。しかし、中国人が日本人に直接接触する機会は少ないといえます。特に若者の交流が大切です。両国は大きな責務を負っているのです。

工藤泰志(認定NPO法人言論NPO代表):

 日中関係にとって、この5年間はなんだったのでしょうか?結論から言えば、互いのイメージは改善されましたが、これ以上改善しないことがはっきりしてきました。政府間関係は改善しましたが、国民の間ではそうとはいえません。
 それはなぜなのかを、今回はきっちり議論すべきだと思います。メディアの協力は大きいと思っていますが、それだけではうまくいかないのが現状です。圧倒的に民間交流が不足していることによって、理解が不足しているのです。
 これを問題提起にしたいと思います。

 次にこの5年で変わったこと、変わらなかったことについてお話しします。
「中国を直接知るための友人がいるか」などの両国民間の直接交流に関する数値は変わっておらず、相手国や両国関係に関する情報源を自国のメディアに依存していることに変わりはありません。よって基本的な理解は変わらないといえます。

 お互いの印象は、プラスに改善しています。しかし一昨年から違う傾向にあります。改善したのは、安倍元首相の東京ー北京フォーラムへの参加、そして訪中がきっかけです。去年は一気に悪化しましたが、今年は少し改善しています。しかし依然として改善はほとんど進んでいないと日本人は見ているのです。設問自体が少し変わってしまっていますが、マイナスのイメージを持っている中国人が7割、日本人も7割以上います。依然として、なぜこんなにマイナスの印象であるのか考える段階にきていると思います。

 次に変わらないものについてお話しします。基礎的な理解については変わっていません。例えば、中国人の半数近くが、日本について、軍国主義とのイメージを持っています。

 なぜこうなってしまっているのか、もう一度今回考えるべきです。メディア間の努力不足でしょうか。それとも、もっと基礎的な理解をしようという努力をお互いがしていないのでしょうか。

 1つの答えが出てきています。日中間は、基礎的な理解不足だけでなく、中国は日本を「過去」で見ているのに対して、日本は中国の「今」と「これから」を見ているのです。日本人は生活レベルで中国を見ています。日本人の中国に対するイメージ悪化の原因はギョーザ問題です。日本人はいまだにギョーザのイメージが根強く残っており、改善の努力が必要です。日本と中国という2つの大国が隣接しているのに、一方は過去、一方は今や生活という、異なる次元で相手を見ているのです。よってお互いの相互理解が進んでいません。この認識を何らかの形で変えていかなくてはなりません。

 次に中国経済についての見方ですが、中国についての報道は日本で増えています。しかし中国がどのような国になっていくのか、日本国民に分かる様な報道はなく、不安を感じている人が多いのです。中国発展の先の姿が、日本人には見えていません。よって日本人の中で不安を感じている人が少しずつ出てきています。
 昔は、中国発展はWin-Winの関係であるとされてきました。しかし今では、中国の発展を脅威に感じる場合も出てきています。自国の国益を守るべきと考える日本人も出てきています。日本人は中国を今として見ていますが、情報が足りません。このことが不安な状況を作っています。お互いの国民は情報や認識を両国のメディアに依存しているのです。
 問題提起したいのは、この今「踊り場」に来てしまっていることをどう解決するか、これが今回議論するべき問題です。

 メディア対話前半②(討論)

黄星原氏(中国外交学会総長):

 私は新聞に関するところで10年間勤め、日本の領事館で11年勤めていました。
 中国で働いている中で記者に関する法律や、北京オリンピックの時の記者についての法律についても知っています。
 規則の制定は外国メディアに対する中国の対応が変化していることを示しているのです。また両国関係のハネムーンも、冷え込んだ時期も知っています。日本の小泉首相の靖国参拝が問題になっていたときに、私はスポークスマンでした。

 私としては、メディアの責任を強めるべきだと思っていますが、中日関係を全てメディアのせいにするのは根拠が足りないと思います。中日間の発展についても、メディアは貢献してきたのも事実です。中国の文化大革命では、私の仲の良かった日本の記者が理不尽に逮捕されました。しかし彼は悪いことは言いませんでした。メディアは恨みを伝えることではないと鳩山総理大臣が言ってくださったのは心強いことです。

 私は日本で5年間の間に大きな事件を経験しました。瀋陽の突入事件、ギョーザ問題。これはメディアの大げさな報道が原因だと思っています。先日日本のメディアの友達に、中国で一番理解できないのはなにかと聞いたら、日本人の友人はラサの314事件、これは中国の作り話じゃないかと言っていました。この荒唐無稽な話は、ウルムチの事件も中国の作り話ってことになりますね。

 中国のメディアに全く問題がないわけではありません。中国人が日本を軍国主義だと認識していることについては、それだけ日本政府の動きに敏感だということではないでしょうか。中国国内の話ですが、中国のある企業が合併したという報道についても、中国脅威論についても、日本のメディアの責任であると前は思っていましたが、中国のメディアにも責任はあると今では思っています。

 日本のメディアにはメジャーとマイナーがあります。最近一部の極端なネットの意見を世論とみなすことがあります。ある行動を起こすときに、勘違いして極端な行動に出ることもあります。民意をどう見るかはメディアにとって大事です。

下村満子氏(前経済同友会副代表幹事、ジャーナリスト、元「朝日ジャーナル」編集長):

 世論調査についての私の印象を述べたいと思います。工藤さんのと少し重なっていますが、最も驚いたのは、中国人が軍国主義と日本をみていることです。これはショッキングです。日本人のほとんどは、日本はもう戦争したくないと思っています。唯一の被爆国でもあります。核兵器を持とうと思えば持てるのに、持っていません。なんで軍国主義だと思うのでしょうか。不思議というか、過去をベースに築かれたものを引きずっているものが多いという印象を受けました。他にも例えば南京大虐殺などです。

 過去を否定したり正当化するという意味であると思われたくないので、あまりこういうことを日本人は言いませんが、日中米の三角の関係がこれから重要になってきます。そのために、日中がお互いに豊かな国にしていくことが必要であると思っています。過去のことをいうのは生産的ではありません。日本の若い世代が新しいアジアを作っていくためには、意識の転換が必要です。

 国の教育の責任もあります。中国は一部偏った歴史教育をしています。日本は歴史教育をしなさすぎです。互いに改善が必要です。

 ここで1つ提案があります。難しい問題のみならず、日中両方のメディアが、特にテレビが、両国民の普通の人みんなの共通テーマ―例えば働く女性の悩み、学生の悩みなど―について、「みんな同じなんだ」と、普通の人たちが感じられるように、ジョイントプロジェクトをやってもらえればと思います。

王安琪氏(雑誌『求是』国際部主任):

 2回の戦争を忘れることはできません。両国民に大いな災いがありました。今、平和発展が1大テーマとなっています。それに対して中日双方は大きな責任を負っています。相互理解と交流が足りないのが現状です。直接の交流は、自分自身も今回が初めてです。

 ここで、私のエピソードをお話しします。空港で小さな日本人女の子に会いました。言葉は通じません。しかし、彼女が毛布を貰った時、私にもあげたくて3人でかけようと言ってくれました。一人っ子政策によって、中国の子供にはそういった心が欠けています。

 中国は中日関係を重視しています。我々は、日本を経済大国・先進国であるし、重要であるとみています。 中国と日本は近隣国です。「遠くの親戚より近くの友人」という言葉があります。我々は日本の経験を重視しています。 循環型経済、環境保護など、日本の危機管理や企業管理などの様々な文書を我々も雑誌で紹介しています。日本の経験を、十分に重視してきているのです。

 メディア対話前半③(討論)

松本盛雄氏(在瀋陽日本国総領事):

 短期的には、ここ数年の日中関係の動きは大きいといえます。

 まず、私が瀋陽に来てから力を入れてやってきたことについてお話しします。一番力を入れているのが、大学生のところに行って日中関係について、20回、のべ4000人に話をしました。そういう経験から、私は若干違う印象を持っています。

 1つは、世論調査と学生調査の結果が大きく異なることです。これは私も驚きました。彼らは新聞やテレビ以外にもネットなどの情報をかなり持っています。政治とか経済よりも、文化や自分で判断をしている学生が多いのです。この世論調査が全てだと思わないほうがいいと思います。時々の事件の影響を非常に受けるので、その他の要因が入って、複雑な背景をどこまで読み込めるかを考えないといけません。

 2つめは、人の往来が少ないことです。とりわけ私が総領事をしていて思うことは、ぜひ内陸まで来ていろいろと見てほしいのです。政府としてはビザのことを改善の余地があると位置づけていて、今現在努力中です。ある映画のおかげで北海道に来る中国人が増えています。広い意味でこれもメディアといえます。なんらかの形でこういうものを支援する仕組みを作れればいいなと思います。

 3つめは、過去についてです。東北地方は日本に対する親近感を強く持っています。逆に日本の方が、中国が過去にこだわってるのではないかと疑いすぎて、交流できていない面もあるのではないでしょうか。中国の方と話をすると、現実的な人だなと思います。中国人は公式的見解と現実を分けている印象を私は持っています。メディアの報道を過度に信頼してもいけないし、色んな面から見てほしいと思います。

胡俊凱氏(『瞭眺』周刊社副総編集長、『環球』雑誌社執行総編集長):

 私はよく日本に行きますが、日本をよく理解しているわけではありません。訪ねるほどに、日本をよく知らないなと思います。普通の国民はもっと知らないのではないでしょうか。

 私はメディア関係者の一人として、問題解決について原点に戻るべきではないかと思います。目的を達成するには、立場を変えることが必要です。調査の結果をあまりに信頼しすぎるのは良くありません。なぜなら、質問自体も設定されているものだから、考えが入ってしまうからです。中国人に痛みを忘れさせることは不可能です。これは当たり前です。中国人の発想は、将来に向けてなのです。パネリストの方が、中国人は過去を見てると言っていましたが、中国人は将来に向かって前向きで、世界に目をむけています。

 中国のこれからの60年について、中国台頭後に覇権を唱えるかは問題ではありません。中国は小さな国ではないので注目されるのは当然ですが、脅威を感じられることはありません。これまで日本の数年間の報道は客観的ですが、一部偏っています。新聞が売れるためにというのは分かりますが。相手の立場に立ってみることが必要ではないでしょうか。ここ数年、中国のメディアは、問題に正面から向かって答えるということについては頑張っていると思います。
政府間の努力もありますが、メディアも努力しました。

 次に民間交流については、大きな進展は見られません。ビザなどのより具体的な方策が必要です。

高原明生氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授):

 日本のメディアについて問題が指摘されました。「相手の立場に立つ」というのは私も素晴らしいと思います。「日本は政治大国になりたがっている」「日本は軍事大国になりたがってる」といった報道が中国のメディアにあります。日本人の価値観は中国人の価値観と違うということを私は言いたいです。中国は全て発展中。中国の留学生は皆熱心。
 日本は政治大国、軍事大国になりたいと思ってない。安保理常任理事国になりたがっているのは、政治大国になりたいからではなく、国連への財政面での支援に対して、それなりのポジションがほしいだけ。

 「価値観が違う」。これだけはよく分かってほしいです。ミラーイメージングはやめてほしいです。たくさんの若者が言うことは、日本に来る前の印象と、日本に来た後のイメージは全然違うということです。私はいつも日本について感じたことを家族に伝えてくださいというと、変な顔をされます。それは日本に行って売国屋になったと言われてしまうからです。これは大きな問題です。

 中国へのお願いとしては、これをもっと深刻にとらえてほしいということです。中国のテレビや映画で、抗日戦争についてのものが多すぎないか。歴史を忘れることはできないし、忘れるべきでもありません。しかし、現在の日本の体制が軍国主義だというのは、過去のイメージが現在に投写されているということで、問題です。

 次に日本への注文です。歴史教育がまずちゃんとしなくてはいけません。日本人は日中関係だけでなく国際問題についての知識が少ないです。メディアでも報道では国際に関することがあまりに少ないです。安保理常任理事国になりたがっているのにです。このアンバランスは是正すべきです。もっと日本の外交について報道してほしいと思います。
 例えば新聞で外交について、政治、経済、国際、のどの面をみればいいのかわからない。話はたくさんあるのに、それが伝わっていない。国際感覚が不足しているところに日中関係改善を訴えても限界があるのではないでしょうか。日本も自己批判が必要です。

楊暁氏(遼寧師範大学教授):

 中日双方の協力の基礎は相互信頼です。問題回避してはいけません。中国への日本の理解が不足しています。
日本から中国は心理的に遠いのです。文化交流が足りず、文化面での隔たりがあります。

 教育とメディアの関係はどうでしょうか。私は教育がソフトなメディアだと思っています。中日両国の間に、より広い分野で交流が増えればと思います。

胡氏:

 程氏に質問です。軍国主義について、「中国人の多くが日本を軍国主義だと認識している」との調査の結果を見ましたが、そんなことないのではないでしょうか。米日は軍事的脅威になる敵であり、中国人が今の日本を軍国主義と見ていることとロジック関係にはないと思います。日本は軍国主義にむけて発展しているように見える=日本は軍国主義、ということではないと思います。

程氏:

 これは調査機関が行ったもので、私はなんとも言えません。工藤さんと下村さんが、中国は過去から日本見ていると言ったが、松本氏が言ったように、そうだと思います。これは現実的に存在している事実であって、感情的な傷は遺伝します。歴史問題に対する現実的態度もあると思います。

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