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【発言録】 外交・安全保障 後半

~前半の続き~

 

発言録 外交安全保障 後半1石破 茂氏(自民党政務調査会長、衆議院議員)

 集団的自衛権とは自国と密接な関係にある国が攻撃を受けた時、自国への攻撃とみなし、自衛のための権利を行使することです。これは国家固有の権利だが、日本は保有するものの、行使できないとしてきました。この見解は、憲法9条から直接導出はできません。しかし、憲法制定時の議論において、共産党からの質問で、個別的自衛権くらいは認めてほしいという共産党に対して、「個別的自衛権を認めることは害悪だ」と吉田茂が答弁したということがありました。質問者と応答者は逆ではありません。その後、個別的自衛権は認められましたが、日米同盟は領土を米国に義務として提供する世界で唯一の関係であります。私は集団的自衛権を認める法律を既に自民党で書いています。この法案により軍事力を抑制的に使うのかを、初めてまともに考えることができるようになるのです。これは自民党、民主党で取り組まねばならない。この安全保障基本法を私は一刻も早く通したい。

発言録 外交安全保障 後半2課題提起
長島 昭久氏(防衛大臣政務官、衆議院議員)

 皆様こんにちは。防衛大臣政務官を拝命致しております長島昭久です。東京-北京フォーラムが日中有識者の率直な意見交流の場ということで、初めて出席することになり、光栄に思います。日本の防衛政策について、まず憲法の話がありますが、基本中の基本は9条と、前文の平和主義、国際協調主義です。そこから、第1に専守防衛、これは侵略を拒否するに足る防衛力は持つが、他国には脅威を与えないということです。つまり、ICBM(大陸間弾道ミサイル)、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母は保持しないということです。第2に非核三原則、核を「もたず、つくらず、もちこませず」です。「もちこませず」には近頃議論もあるが、厳格に守っていきます。第3に、徹底的なシビリアンコントロールです。自衛隊の予算は国会で決められ、内閣のコントロール下にあり、編成、整備、体制に至るまで徹底されています。次にわが国、防衛の3つの柱をご説明致します。まず、わが国自身の努力で安全を確保することです。添谷先生をはじめ有識者の皆様に今後の安保政策提言をまとめていただきました。特に、実効的な抑止体制についてです。単に装備があれば抑止力が効いているというわけではありません。最近は日常活動を通じての動的抑止ということを言っています。常に活動することで抑止体制が実効あらしめられるのです。

 次に、同盟国協力です。ギクシャクしているという人もいますが、同盟の基本枠組みは変わっていません。また軍事大国にはならないと言いましたが、日本が盾、米国が矛の役割を果たしております。米国は有事のリスクを取り、日本は平時のコストを負担しています。最後に、国際社会との協力です。グローバルな安全保障環境の改善をめざし、今回の提言にもありましたが平和創造国家として紛争、不安定の芽を摘んでいきたいと思っています。中国の皆さんとも協力する所存です。

発言録 外交安全保障 後半3課題提起
呉 傑明氏(国防大学軍隊建設軍隊政治工作教研部主任)

 私は国防大学から参りました。今回で参加は三回目です。回を重ねるごとに議論が熱くなっており、多くの共通認識を得られるようになりました。主に安全保障という角度から日本と中国がどのようにアジア、世界の平和・発展のために協力するのか話したいです。平和や発展を求めるのは世界の流れであります。世界では多極化の潮流があり、経済のグローバル化が進展しています。いかなる国もその流れに沿って努力していかなければなりません。冷戦的な考え方で世界を見てはならないと思います。故意に相手を抑制するのもよくありません。孫文は世界の潮流に沿えば繁栄するが、逆らえば滅びると述べました。現在もこのような状況です。アジアで影響力を持つ日中はこの点に留意しなければなりません。このような認識を社会に広げていくべきであります。

 平和と発展に関して日中には多数の課題も存在しますが、Win・Winの関係を築かねばならないと思います。我々は、テロ・環境・大量破壊兵器の拡散など複雑多様化した問題に直面していますが、このような問題は単独では対応できず協力が必要です。それから両国の間には現実的な問題として、領土・慰安婦・補償などの問題もあります。こういう問題があったので、両国関係は長くにわたり敏感な関係にあったけれども、問題を解決するために長い目で秩序に基づく態度で信頼関係を深め、食い違いを解消したいと思います。両国の安全保障政策の方向でありますが、現在の課題は信頼感を増やし、安全の仕組みを長期化させることです。相手方の防衛政策を解明することが大切です。お互い信頼が足りないという問題は、相手の防衛政策を理解していないから起こるのです。

 中国は積極的に防衛政策を発表しています。日本も積極的に開示すべきです。中国軍は平和維持という目的がはっきりしています。日本側が国際的に責任を果たしたいというのは理解しています。また、安全保障交流を強化していくべきだと思います。また、軍事情報の進展について細かく連絡することが大切です。さらに、青年の軍事士官の間で交流を行うだけでなく、メディア間、民間の交流によって互いの信頼を深めていくべきです。

発言録 外交安全保障 後半4西原 氏財団法人平和・安全保障研究所理事長)

 呉先生がおっしゃった点に疑問を呈したいと思います。中国は発展のために平和が必要と言いますが、過去に起きていることをみると、平和的環境を利用して軍事力を高めてきたのではないでしょうか。特に海軍が問題です。近年になり攻撃的姿勢になりました。南シナ海の演習をみると、これまでとまったく違う姿勢のように思います。迅速な政策の理解が必要との意見には賛成です。だが、そのためには透明度を高めてもらわないといけません。また、中国側は軍拡のスピードは速くないというが相当速いのではないかと思います。

発言録 外交安全保障 後半5劉 江永氏(清華大学国際問題研究所副局長・教授)

 私は問題を提起したいと思います。両国の安保にはいくつかアンバランスがあります。中国の対日認識が変化し、中国人は日本を軍国主義だと思っていますが、安倍内閣以降、意見が変わってきています。戦後の日本は平和的であったと認識されています。また、中国は以前弱かったが、強くなってきました。日本は財政赤字なのに、中国は高い経済成長を保っています。こういうことからも、中国は説明すべきだと日本は考えているのではないのでしょうか。民間交流は改善していますが、発展と同時に、両国の軍事安保の面、日本の対中心配が大きくなっています。本討議は核心に触れるものだと思います。問題はねじれをこれ以上にしないことです。相互交流を積極的に行うべきです。民主党政権初の防衛大綱で中国をどう位置付けるかが非常に重要な問題です。台湾問題でこれまでと同じ立場を示すなら心配なことになります。

発言録 外交安全保障 後半6山口 昇氏(防衛大学校総合安全保障研究科教授、元陸上自衛隊陸将)

 私は信頼醸成措置が重要だと思います。沖縄周辺は中国が活発に活動する前にも日米は活発に活動してきました。ここに中国が出てくると偶発的に事故などが起こる可能性があります。日韓では戦闘機が互いの国の方に飛んでいくと不安になるから、ホットラインを作りました。中国海軍はシーマンシップというか、大人の関係にするにはまだまだです。日本の護衛艦とヘリが接近したことがありますが、エアマンとしては節度をもつことが必要です。

呉 傑明 氏
 中国の全体的作戦能力などは世界の強国には比べ物になりません。海軍は領海の安全、シーレーンの維持その他への活動であって、日本に対抗しようなどということはありません。透明度についてはずっと要求がありましたが、かなり改善してきています。透明度には戦略的意図の透明、軍事力の透明の二つがあります。軍事力の透明を公開する必要はないと思います。戦略的意図を表明すれば透明度の確保には十分です。つまり、他国を侵略する気はありませんということです。全部公開する必要はないと思います。軍事力の拡大速度が速いかどうかに関しましては、予算は増やしているがGDPの2%以内ということでみなさんが心配するレベルではありませんし、民生を犠牲にしてまでということはないです。日中の偶発的事故の可能性はあるため、意思疎通の仕組みを作ることは重要だと思います。

長島氏
 最近特に感じるのですが、中国は自国がどれだけ発展しているか自覚に乏しいと思うことがあります。時代の潮流に乗るというより、潮流を作り出すことがありえるということです。国際ルールが動揺するのではと心配されています。米国の主張に中国の大臣が反論したことがありましたが、こういうことは今まであまりなかったのです。この2、3年にアグレッシブとは言いすぎかもしれないがやや強硬になってきました。透明度もまだ不十分と自覚しているはずです。原子力潜水艦が日本の領海に進入した事件がありました。私達はまだそれに対する説明を受けていません。対衛星兵器開発についても、意図を含め明らかになっていません。そういった部分においても説明を尽くしていただかないといけません。今までは日本が1番大きかったけれど、中国も影響を増しているのだからその点を意識していただきたいと思います。

発言録 外交安全保障 後半7高原 明生氏(東京大学法学政治学研究科教授)

 なぜ日本で心配が増えているかというと、劉先生の言ったことも妥当でありますが、中国軍事関係者の激しい言説が一端を担っていると私は思います。これは過去にはなかったことです。例をあげると、シーレーンを海上生命線と呼んで南シナ海・マラッカ海峡をとおって中東にまで言及している言説もありますし、南シナ海の問題は軍事力を後ろ盾に対処しなくてはならないと言ったような言説も中国のメディアではあります。「敵国艦隊」という表現のものもあります。普通の日本人が驚くようなこうした発言について、なぜこうなったのか理解に苦しみます。

発言録 外交安全保障 後半8中国側司会
呉 寄南氏(上海国際問題研究院学術委員会副主任、研究員)

 90年代半ばの軍事発展の要素は台湾情勢です。今後は緩和されていくでしょう。軍事力は経済の発展と正比例です。国際社会では大国としての責任も感じています。海軍が発展し、シーレーンが確保できれば、津波の時にも対処できるし、国際貢献もできます。高原先生のご発言については、昔将軍だった人が退役して自由な身になったうえで発言したものではないでしょうか。中国の公式発表に注目してほしいです。昔中国は世論をコントロールできていましたが、現在コントロールできず、一部メディアは極端な言論を始めました。また、中国海軍が沖縄近海を通り黄海に出るのは、ほかに道がないからであり、国際法にも即しています。アメリカは偵察の回数を減らすべきです。日本とアメリカは海の国で、中国は陸の国、というのはステレオタイプです。国際社会での協力を通じて海に出たいと我々は思っております。尖閣諸島の問題は武力でなく話し合いで解決すべきです。

発言録 外交安全保障 後半9藤田 幸久氏(参議院議員、元民主党国際局長)

 戦略的透明性についてだが、ハイチに行ったとき、中国の軍が世界で4番目に到着し働いていました。中国がこれだけ迅速に動いたのは驚異です。そこで中国は、が決断すればあれだけ大きい組織でも迅速に判断できるのだと思います。軍事的脅威の世論を認識すれば、迅速に対処できるのではないでしょうか。災害支援外交は外交のツールになってしまいました。外国では中国が日本を抜いたのだなと。中国のPKOはほとんどが非戦闘員。ハイチも遅ればせながらPKOが出て、近年はパキスタンにも出まして、そういった分野で互いを支え合わなければなりません。それから長島さんに聞いたらいいのかわからないが、今、帯広で大規模な演習が計画されているようです。今までは西方重視で演習してきたが、今回はロシアも改めて重視するでしょうか。こういうこともメディアは客観的に報道すべきだと思います。

山口氏
 ロシアを念頭に置いたものではありません。他の部隊が訓練する時もあり得ないシナリオですることがあります。訓練というのは蓋然性の高いシナリオでやっているわけではありません。ありえないような訓練を行うが、あくまでも総合的訓練であり、実際にそういうことがあると思ってやっているわけではありません。北海道は戦略予備の地域だから、いろいろやっています。

長島氏
 西方には土地が少ないです。西方重視といっても大量の自衛隊をはりつけるわけではありません。スタティックではないということであって、機動的に展開できる状況にしておいて訓練は広いところでやろうとしているだけです。

発言録 外交安全保障 後半10胡 飛躍氏(中国医学科学院医学情報研究所研究員教授)

 私は高原先生同様に軍事関係の専門家ではないが、2つ質問させてもらいます。長島さんは国防政策について3つの柱を紹介し、石破さんも永遠の同盟はないと言っています。私は、日米同盟は歴史の産物であると思います。北東アジアにおける冷戦の状況下でできた同盟関係です。今後東アジアの安全保障を考える上で、日米同盟を考えることは必要不可欠であります。北朝鮮と中国は同盟関係ではないが、日米は同盟関係を結んでいます。アメリカは東アジアだけでなく世界の至るところで軍事力を持っていると中国の若者は信じており、心配しています。なお、アメリカの軍事行動、イラク戦争は世界各地に大きな影響を及ぼしています。この点について聞きたいと思います。また、日米同盟を今後どうするのかもお聞きします。

発言録 外交安全保障 後半11添谷芳秀氏(慶應義塾大学法学部教授、東アジア研究所所長)

 安全保障についての言及がありましたが、私の理解を述べたいと思います。これまでの日本は自身が平和主義を維持することで、地域の平和と安定に貢献しているとの論理がありました。集団的自衛権などを守ることが戦後平和主義の証で、それで平和に貢献してきたということです。そこから一歩前に進むことです。皮肉かもしれませんが、これは冷戦的思考ではあります。確かにこれまでのことも大きな意味があったが、国際環境が変わり、中国の台頭もあり、これからの生き方として、もう一歩出ようとするべきです。保守的な衝動で「ないから持つんだ」というのではない、平和創造国家を目指すべきです。日本の防衛政策の制約についても、明石さんが言った国連での経験のように、集団的自衛権が国際貢献の障害になっています。日本には武器輸出3原則がありますが、インドネシア輸出の時は、閣議で例外決定しました。障害になるのであれば、という論理から見直そうと思います。その受け止め方は冷戦的ではあります。マスコミや中国の解釈では日本への警戒となるのはわかっています。日本はいつもそれらへの対応を考えながら言葉を出してきました。そういう気遣いはやめるべきです。これでは先に進めません。制約があれば見直すのが基本的発想です。安保環境の変化があるのだから、新しい枠組みは当然というのが我々の考えです。中国は全く心配する必要はありません。

石破氏
 前半で答えられませんでしたが、なぜ北朝鮮は核を持ってはいけないのでしょうか。私は大陸国家というのは陸が主で海が従だと思っていたのですが、海洋国家に対抗するために海軍が必要だと思ったのでしょうか。中国は世界で11番目の海岸線の長さを持った国であり、鄭和以来、力を入れてきました。それにもかかわらず、なぜ空母を持とうとしているのですか。それにお答えいただけないのであれば、せめて軍事費の透明性について答えてほしいです。私は中国における文民統制がどのように効いているかに強い関心を持っています。議会に対してどのように予算要求をするのかが気になります。空母を持つならばアメリカのような空母なのか、フランスのようなのか、タイがもっているようなやつなのでしょうか。つまりアメリカの航空母艦は決して抑止力ではなく、覇権国家としての合衆国に必要なものです。

 私は大臣時代に日本は空母を持つべきではないと言いました。なぜなら、高額だからです。私は永遠の同盟はないと信じていますが、合衆国は見通しうる将来において日本と国益がかなり共通しています。全く同じわけではないが、米国と同盟を組むことには、余りある利益があります。空母に関しては米国が持っているので私達が持つ必要はありません。中国は何のために空母を持つのでしょうか。抑止力としての軍事力を考えているのでしょうか。これまでの議論で中国側から抑止力という言葉が一度も出てきておりません。文民統制はどのように機能しているのでしょうか。軍の自己増殖的な性向を抑えることが国家の開放に必要だと思います。あと、私は中国にある戦車を見に行ったとき、そういうものは存在しないといわれて見せてもらえなかったことがあります。

呉 傑明氏
 インド、アメリカが空母を持つのはニーズがあるからです。中国も同様に必要性があるという論証が必要です。日本が必要ないのは同盟があるからです。中国が持つことには繰り返し討議が必要です。一隻の空母を持ったからと言って覇権は持てないのであります。自己増殖的に軍隊が強大化するというのは、体制の問題であり深い問題です。軍隊は、実質的に政府の下にあります。軍は独自の行動は起こせません。私は30年軍隊にいますが、終始、国のコントロール下にありました。自己強大化は決してありません。やはり軍事の透明度を高めるにはコミュニケーションが大事だと思います。世論がマイナスの影響を与えることもあるかもしれないが、双方の間に建設的な議論が重要です。

劉氏
 中国の海洋活動のことで日本側は説明不足だと感じていることについての長島さんの質問ですが、中国の潜水艦は機械の故障で日本側に入ったのであり、外務省にはすぐに説明しました。機械の故障で入ってしまったのはレベルが低いからだと思います。かつて日本・米国の海軍力は強く、中国は弱くて海に出られなかった。日米がペルシャに出ても中国は脅威と感じたことはないのに、どうして、中国が沖縄近海を通ると覇権と言われるのでしょうか。中国は地理的にそこをどうしても通らないといけないのです。日本はアメリカと同盟国であり、中国を脅威としているので、危機感を持っています。戦略的互恵関係に対して肉づけが必要です。やはり冷戦思考にこだわっていると、戦略的互恵関係は骨抜きになると思います。なぜ北朝鮮は核を持ってはいけないのかという質問に関しまして、北朝鮮は狭いし、核開発は財力を費やすにもかかわらず制裁を受けてしまうのです。これは北に不利なことであります。それはほかの国にも言えます。核拡散は世界の流れに逆らいますし、核がテロリストの手に渡ると危険です。

長島氏
 私達は公海上を通過するから問題としているわけではありません。領海を通過するとき潜水艦は浮上しなければならないのです。それにあの海域は浅く、そこを通るのはすごい操船能力が必要です。中国の戦略的意図にはしっくり来ず、不安が先立ちます。南シナ海は日本のシーレーンで、死活的に重要な海域です。中国は南シナ海を核心的利益としたのは初めてです。日米同盟は歴史の所産ですが、今、義は高まっています。地域の安定の戦略的バランサーとしてアメリカは存在します。哨戒艦沈没事件後、韓国の報復を米側がかなり止めました。国際的枠組みのほうがフェアーな結論に至るものです。

添谷氏
 日本の退役自衛官にも勇ましいことを言う人がいますが、あなた方はそれを見てこれが日本だと言っているのではないでしょうか。そういうことを探すのは簡単ですがそういう前提で政策が決まることはありません。

 安全保障環境の分析をやって日本の環境を考えるときに、日米同盟を入れないと日本の対応は完全にはなりません。日本が独自にできることは限られています。

 さらに地域との協力関係を考えないと日本の対応は完全な絵にはなりません。朝鮮半島の問題は日本と韓国の関係をしっかり考えないといけません。日米同盟の関係は周辺事態法の制定で、ある程度できますが、後方支援程度です。邦人救出の問題には韓国と連携しなければなりません。

発言録 外交安全保障 後半12張 沱生氏(中国国際戦略研究基金会学術委員会主任)

 1つ言わせてもらいます。南シナ海は中国の核心的な利益であると長島さんは言いましたが、中国の指導者は南シナ海が中国の核心的な利益であるとはっきり言明したことはありません。もう1つ補足すると、ベトナムの国防相が中国を訪問した際、ベトナムはアメリカの同盟国とはならないと言いました。日米同盟を見ると、米軍基地の維持は日本の大きな負担になります。「思いやり予算」等のことです。日米地位協定で日本とアメリカの位置づけの定義について、国益という角度から日米安保協定を改めて考え直す必要があるのではないかと思います。

若宮氏
 ここで議論を聞いている参加者の方からの質問を募りたいと思います。
 何かご質問はありますか?

参加者
 中国の南シナ海進出は理解できます。しかし、太平洋に進出する意図は何でしょうか。

劉氏
 中国が第二列島線を突破しようとしているのではないかといいますが、これは冷戦中に中国封じ込めのためにつくられた概念であり、アメリカの覇権主義的な考え方です。21世紀も、アメリカが決めた枠組みで考えるのは遺憾です。公海はみんなの平和の海です。

長島氏
 イラク戦争には私達は批判的でした。2002年の秋から2003年の開戦を思い返せば大量破壊兵器が見つからずフランスは査察を提案していました。あれは先制攻撃ではなく予防的な攻撃であったので国際法上は問題があります。そういう際に日本政府はアメリカに対して忠告をすることができなかったことが、力不足であったと思います。それ以降、日本に情報収集力がどれくらいついたかというとまだまだと思います。

明石氏
 それについて補足致します。湾岸戦争が終わった直後のイラクに行ったことがあります。バグダット郊外の軍事基地を視察しましたが、IAEAの査察の壁1つ向こうに発見したが核濃縮の巨大な工場でした。IAEAはこれにびっくりしました。査察システムを作りました。サダム・フセインは札付きの男です。国連やIAEAにも強硬な態度を取っていました。サダム・フセインは持っているかのごときブラフを重ねていたのです。ということで、アメリカの戦争のやり方はまずかったですが、戦争に踏み切ったことには情状酌量の余地があると言えます。

山口氏
 最後に補足しますが同盟国としてアメリカ側がどうかなあと思った時に袖を引けるぐらいの強さがほしいですね。

発言録 外交安全保障 後半13日本側司会
若宮 啓文氏(朝日新聞社コラムニスト)

 以上で、「外交・安全保障対話」を終わります。4回目の司会でしたが、最も議論がかみ合ったと思います。演説大会にならずに良かったです。

呉寄南氏
 それでは拍手とともに、今回のフォーラムを終わりにしたいと思います。

親カテゴリ: 2010年 第6回
カテゴリ: 発言録