. 言論NPO主催「東京-北京フォーラム」公式サイト - 【発言録】 政治対話 前半

【発言録】 政治対話 前半

 

発言録 政治対話 前半1
日本側司会
松本 健一氏(評論家、麗澤大学教授)

 

 本日の政治対話分科会では 、10分ずつ話し、休憩10分、質問タイム、フロアからの質問を割り振り、各先生に答えて貰う、挙手性の議論1時間というようなプログラムにしたいと思います。本日は160人を超える程度の参加です。東大、慶應、早稲田30人ずつ、そのほかに中央、共立女子、文京、学習院、一橋、東京外大、聖心女子、東京工大も10名くらいいますね。それから各大学の留学生10~20名です。午前中にも政治対話をやったのですが、午前中の政治対話には学生は参加していないですね。午前中は政治家が一方的なスピーチをしました。このセッションは交流して、討論するものにしたいと思っています。

 これは私の持論ですが、2025年には中国がアメリカのGDPを抜くと思っています。人口がアメリカの4倍ですし。既に2020年には抜くと言われているしね。中国15%、インド10%、日本5%これに韓国などを含めれば東アジアだけで世界のGDPの40%を抜くことになる、その時に日中はどのようなアジア像を作っていくのかを考える時点に来ていると思います。

発言録 政治対話 前半2

藤井 裕久氏(元財務大臣)

 

 20世紀の日本は、日本が中国の加害者であることを明確に認識しなければならない。1915年の21か条の要求から始まった。「未来」というにはこの前提をおさえないとおこがましい。まず過去に立った上で、友好関係を進めて行かなければならない。まだ日本には、一部だが、自虐史観だと言う者もいる。マスコミの影響もあり、日本が軍国主義、覇権主義という印象が中国においてぬぐえないのが現状です。ナショナリズムは大切だけれど、偏狭なナショナリズムと健全なナショナリズムがある。前者は、「世界で一番おれたちの国が良い」と考える人で、それが国を統率するとその国は滅びます。後者は世界平和の根源になります。

 中国をGDPで評価するのは当然です。1964年オリンピック、1970年万博、日本で6年かかったことを中国は2年で達成しました。そして中国もいずれ今の日本のように成熟します。ただし、日本がGDP5%だからと言って弱くなるわけではない。日本の科学技術は素晴らしく、科学技術を中心として経済的に貢献できる。世界に、中国と一緒になって貢献して行かなければならない。日本には渡来人と言う言葉があります。それは中国人が日本に来て技術を教えてくれたと言う意味を含んでいます。そういう意味で根っこは中国にある、それを文化的に認識すべきだと思います。中国に1000年以上お世話になっているのです。日本と中国の文明には違いはあるものの、大事にしなければならない部分も多いと思います。

発言録 政治対話 前半3

李 肇星氏(全国人民代表大会外事委員会 主任委員)

 

 私は、相手に学ぶ、若者に学ぶことがいかに大事かを伝えたいと思っています。中国と日本は隣国で、共通点も沢山あります。これまで2000年間の交流があり、一方で不幸な歴史は20年です。お互いに交流していた時期が長いのです。だからこそ共に新しい歴史を切り拓いていかなければならない。

 来月29日は両国国交正常化38年の記念すべき日です。その記念すべき日に、皆さんに政治的責任などを語ることは大事です。第一に、両国の国民は戦争の被害を受けて来た人です。世界各国のうち、60の国は巻き込まれ、6000万人が犠牲者になっている。両国民は平和を愛している。2つ目に、進歩がある。日本は第2位の経済大国です。日本に学ばなければならない。中国の国民は、長い年月を費やして国を前進させることが大事だと気付きました。そして3つ目に、同じ文化のバックグラウンド、ルーツがあります。私は日本の若者から聞きました。日本の『源氏物語』です。1964年にユネスコが源氏物語の作者の紫式部を世界の最も素晴らしい文学者と認定しました。彼女を私は尊敬しています。最後になりましたが、両国の未来が明るいものになることを願って話を終えたいと思います。

発言録 政治対話 前半4

加藤 紘一氏(衆議院議員)

 

 自民党の加藤紘一です。今、日本の政治は、これほど混乱していることはないほど混乱しています。政治のレベルが下がったことが挙げられていますが、それは自民も民主も変わりない。自分の発言に対する責任の軽さが露呈している。この問題については、政界にいる人間として責任を感じています。今、政府が抱えている問題として、大きな政府で行くのか、小さな政府で行くのか。社会の最も小さい生活単位である家族をばらばらにしてしまってよいのかなどがある。

 私は、最近小林よしのりさんと話す機会を設けています。すると、民主党の中から、「小林さん、話を聞かせて下さい。私たちも保守ですから。」という声が上がっているという。民主の中にも自民の中にも、中国に関する議論がバラバラに存在している。そして、この20年で政党の右傾化は感じていて、これは中国・韓国が成長してくることに対するジェラシーだと考えています。

 いわゆるナショナリズムについては、民族自決をけしからんと言える人は右翼にも左翼にもいない。ナショナリズムの1つは、とにかく隣の国とは仲良くしたくないという「闘争のナショナリズム」。もう1つは、世界の国と競争するナショナリズムがある。これは健全。3つ目は、理想的なナショナリズムで、日本の良さを誇るナショナリズム。しかし、日本は「何なのだ」ということが一言で言えない。そこで脱亜入欧ですが、学生さんにそれに代わる4文字を作ってほしい。脱亜入欧では喧嘩になってしまう。それぞれの国の良さを、1つのコンセプトにする言葉は無いものか。

発言録 政治対話 前半5

白 岩松氏(中央テレビ局高級編集者)

 

 加藤先生の素晴らしい意見には、私も感じる部分がありました。中国のGDPが日本を抜いたという報道があったが、それは正常な状態ではない。我々の生活が変わるにはまだまだ時間がかかる。では、中国側のパネリストの紹介をしましょう。彼は「農民」と言えます。未来への種を植えたのです。遣唐使の役割を担い、中国と世界が対話をする際に最先端に立って世界に対して説明しました。立命館大学に孔子の像があるが、趙 啓正先生が遣唐使として日本に来た時に設立されました。また今では、人材を育てると言う意味での「農民」のような仕事をしていらっしゃいます。

発言録 政治対話 前半6

趙 啓正氏(全国政治協商会議外事委員会 主任)

 

 先程、藤井さんが歴史を振り返りました。アジアンドリームを考える際に歴史を回顧することは非常に大事だと考えます。私は「歴史は忘れてはいけない。しかし恨みを遺伝させてはいけない」と、中国の学生に伝えており、学生たちはそれを受け入れてくれました。出会った日本人に対し好感度を持っていることが多い。私の娘も、日本人の家庭にホームステイした経験があり、歴史を学ぶ人と議論をしたそうです。日本人が中国人を見る際にも、中国を「立ち遅れている国」とみることはいけないと思います。私の祖父は法政大学に留学し1907年に帰国しました。父は祖父から教育されたわけではありませんが、日本人の勤勉さが最も印象に残っていることを祖父は私の父に伝え、私はそれを父から伝えられました。漢字は日本と中国が共同で持っているものであり、漢字があったからこそ日本は発展することが出来ました。しかしある時期を境に、日本人は中国の本を訳さなくなったのです。

 「懇談会」「営業中」は日本から中国に渡った単語です。980個程あります。「社会主義」「共産党」「物理学」「幹部」「改革」「革命」・・・共産主義を日本人は嫌わない方がいいんです、日本人が作った単語ですし。また「緑化」「都市化」というように「化」を使うのも日本から中国に入ってきたものなのです。

 このように漢字は共通の財産であり、漢字を使ったから中国のものというわけではない。この問題について学生と共に考えたい。欧州人は、「ヨーロッパは素晴らしい、アジア人はヨーロッパを学べ」というが、そのまま学ぶわけにはいかない。日本語や中国語を捨てて、英語を共通語にするわけにはいかない。日本人とは何なのか、本物のグローバライゼーションを皆さんが見ることが出来る。皆さんに希望を託して話を終えたいと思います。

発言録 政治対話 前半7

呉 建民氏(中国外交部政策諮問委員会委員)

 

 現在、我々が直面している状況は、人類数千年の歴史の中で経験したことがないものだと思う。

 グローバルシフトによって、アジアが世界の中心になります。では、どうしてアジアは変化しているのでしょうか。アジアの発展から私たちは多くを学ぶことが出来ます。まず、最初に発展したのは日本で、感謝しなければならない。日本は輸出を中心として発展しました。アジアの戦後の発展にとって大きなヒントになりました。日本はアジアの発展について大きな貢献をしました。2つ目は、インドネシア・フィリピン・マレーシア・シンガポールと言った4つのドラゴンと言われる国々が日本の発展の仕方をまねて発展しました。日本が発明した輸出に牽引されるモデルです。この原動力は、まだありますが、やや下火になってきました。また、91年にインドでは改革を行い、かなりのレベルで「輸出型」発展モデルを普及させてきました。では、現状は皆さんがおっしゃったように、21世紀はアジアの世紀になると予想されています。19世紀は欧州、20世紀はアメリカの世紀だった。彼らが発展する中で、搾取と言う意味の被害を受けて来た。

 ではアジアが発展することで、誰が損をするのか、誰かが被害を受けるのであれば、発展の仕方を考えなければならない。欧米とは異なる発展の仕方を探らなければならない。全てを自分が抱え込むのではなく、シェアする時代。より良い発展のモデルを見つけなければならない。これらの歴史は近代の歴史において、各地域の発展が他の地域とは無関係に起きて来たことが問題だったと思います。アジアの国家が発展する際には、そのほかの地域も発展しなければならない。前回も言ったが、東アジアでは宗教戦争が起こったことがありません。欧州にはそれがあります。これは、アジアが文化においては寛容であり、お互いに学び合う姿勢があることを示しています。今日、私たちは、大きな変化の中にあるアジアの発展が黄金の時代に入っていることを確信しています。アジアの発展は人類の輝く未来を導くために必要、日中友好がなければ持続的で安定的なアジアの発展はない。共に手を携えて行きましょう。

発言録 政治対話 前半8

林 芳正氏(参議院議員)

 

 安全保障の話をしたいと思います。中国は大陸国家、日本は島国です。日本は、欧州でいうイギリスのポジション、中国がロシアと言いたいわけではないですけどね。そう考えると、日本と中国の関係について考える必要があります。ASEANでも言われたが、日米同盟がしっかりしていないと不安になるみたいですね。日米同盟がなくなると、ASEANの関係も崩れるのではないかという懸念があります。防衛がしっかりすれば、経済もしっかりするのです。その認識を持つべきです。今までは中国が市場、かつそれ以上に工場であった。今後はより中国は大きな市場として考える時代になる。中国を中心に、アジアのコモンマーケットが設立され、そこに、同じようなものを食べ、同じような雑誌を読む中流階級が生じる。その彼らが安心して経済活動を行えるようにするのが政治の責任だと思います。

 映画や音楽と言ったコンテンツを、日本と中国で一緒に作る、個別に作るよりも新しい付加価値を生み出す。コンテンツを出すとなると、知財の基盤をしっかりしないと、適切な処理がなされなくなる。経済の相互依存が深くなれば、防衛の安定性も保たれる。日本にたくさん工場があるとなれば、日本を襲うことはなくなる。長い目で見ると、欧州でやったような経済共同体が発生してきて、安全保障に関する議論を進める枠組みも作られてくる。

 

福山 哲郎氏(内閣官房副長官)

 鳩山さんから菅さんへ首相変更で、「東アジア共同体」「気候変動」「核軍縮」などの外交の基本的な枠組みに変化はありません。自民党政権時代の貢献もあると思いますが、この1年の日中ハイレベル会談は前進していると思います。それぞれが協力できる分野を模索出来る継続的・建設的ステージに入っています。日本の外交の基軸は日米同盟だが、日米同盟が一定の役割を果たす中で、中国との具体的な協力について積極的にやって行かなければならないと思います。

 日本とアメリカが緊密に協力しながら、中国にも責任の一端を果たして貰うようにしたいと考えています。アフガニスタンでの日本のコミットを考えると、少なくとも農村振興、アフガンの国のそれぞれの再統合、警察への支援をしています。NATOなどが出来ないことを日本がやったと言えますね。核軍縮については、NPTで10年ぶりに一定の効用を見たと思います。

 マラリア・エイズ・貧困などの問題について、日本が、平和存続国家としてどのようなアクションが取れるかを考えるべきだと思います。日本が積極的に世界に貢献して行き、その中で中国と協調できるものがあれば、積極的に協力体制を敷いて行きたいと思います。

親カテゴリ: 2010年 第6回
カテゴリ: 発言録