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安全保障対話②(前半:討論1)

劉 江永氏(清華大学国際問題研究所教授)

 それでは1人5分以内で、中日の順番に演説について討論していただきましょう。

林 麗韞氏(中華全国帰国華僑聯合会元副主席、全国人華僑委員会元副主任委員)

 今回は安全保障のフォーラムに参加させていただきありがとうございます。ここ25年は台湾と大陸の関係改善を進めてきました。平和発展と協力はアジアの流れでしたが、現在は課題に直面しています。すなわち、平和がなければ経済発展は出来ない。しかし、経済の発展がなければ平和もない。つまり平和と発展の両立が必要です。アジア地域の安全と協力は中国にとって非常に重要で利益となります。そのためには調和の取れた環境を整えることが重要です。エネルギーや環境保護、インフルエンザ対策も重要です。

 台湾問題は中国の内政問題ですから、世界は中国の立場を考えなければなりません。我々の努力にもかかわらず、一部の台湾出身の人に台湾独立の立場が見られます。これは平和発展に抵抗するものであるにもかかわらず、海外で支持している人までいます。これは内政問題なので侵害すべきではありません。チベットの問題も地元の人は平和を望んでいますが、一部の人がそれを阻止しています。

 台湾との関係は徐々に良くなっており、90年代になると両政府が2つの組織を認めました。それが海峡会(大陸海峡両岸関係協会:中国)と海基会(台湾海峡交流基金会:台湾)で、私は海峡会の第二期顧問です。これらは交流の架け橋としての役割を果たしてきました。李登輝が2国論を提出して以来、2つの組織の交流は一時中止に追い込まれました。共産党と国民党は数十年の関係を打開して2005年に会談し、それ以来国共は協力し多岐に渡って交流の場を作っています。2つの与党の交流も深まり、今年も多くの観光客が相互に訪問しています。これにより台湾の観光業は活気を取り戻し、貿易額も上がりました。両岸関係は良好です。胡錦涛国家主席のもとで協力します。

 先ほど日米同盟の話がありましたが、私にも考えがあります。日米同盟に特に反対はしませんが、防衛システム、つまり中国の内政問題をその中に入れることについては懸念しています。ここが明確にならないと中日関係はよくならないのではないでしょうか。福田元首相が訪中したときに彼は台湾の独立に反対すると言い、これには感激しました。鳩山総理も外交面において新しい傾向を持つことを期待します。望みとしては中日双方が今までの出来た4つの共同宣言に基づいて、内政問題に介入することに反対していただきたい。
互いに平和的発展を指示し、日米同盟の話は内政干渉がないように、そして中国の利益を考えてアジアの安全に期待します。

劉氏:

 ありがとうございました。藤田氏がお話しされたように平成維新といいますか、掃除するときにゴミにちゃんと気づいて欲しいと。

若宮氏:

 ありがとうございました。色々な話題が出ていますが、できれば的を絞った議論を行いたいので台湾の話は後半にしてください。

若宮氏:

 日本側からは明石先生から。明石さんは元国連事務次長で、とりわけPKO方面での実績があります。今は国際文化会館の理事長をされています。

明石 康氏(財団法人国際文化会館理事長、元国連事務次長)

 私は90年代の日中でのカンボジア協力を忘れられません。ここでは3つの点をお話したいと思います。

 まず一点目。話がハードパワーに偏っていますが、むしろソフトパワーの活用を強調したいと思います。ここでは日中が互いに学び合うことが重要となります。ソフトパワーは流行っていますが、日本が多くのことを中国から学んできたということを、中国の人に認識して欲しいと思います。儒教の影響力も継続していますし、日中間での統一的な漢字使用を考えてはいかがでしょうか。

 次に二点目ですが、日中関係は新しい段階に入っています。「2200年の交流と50年間の対立」と言われますが、現在は日中関係は経験したことの無いような平等な関係を構築するときです。互恵の関係についてはお二人の基調報告に全く賛成で、戦後日本の変革ということでは平和志向の歩みをきちんと認識していただきたいと思います。

 三点目に申し上げるのは、戦後日本の平和理念の強さについてです。日中世論調査の結果も見て、まだまだ日中は歩み寄る必要があると痛感しました。特に日本の変化について中国側の認識が十分でないと思いました。いまだに軍国主義ということになっています。確かに日本の一部にはそのような考えが残存・復活していますが、それはごく小さいものです。むしろ小市民的な平和主義になっているのが問題で、これについては中国が理解してくれることを希望します。

 戦後日本は核のない世界を念じてきましたが、これは一般に考えられるほど簡単なことではなく、その点は一歩ずつ地道な発展を遂げるしかありません。呉先生も日中韓の関係が大事だと言いましたがそれにはまさしく賛成です。韓国が入ることでハードパワーが強固になります。またインドが触れられない場合がありますが、日中韓印という関係も無視してはいられません。

 最後に藤田氏も触れられた、歴史を直視しようという私たちの世代と最近の若者の対比ですが、現代の教育は手薄になっています。古代から順に歴史を教えるからこうなるのであり、東アジアの現実を見た将来の構築が大事なのではないでしょうか。以上です。

劉氏:

 続いて李秀石氏。川口順子さんに似ていますね。

李 秀石氏(上海国際問題研究所日本研究室主任)

 日本の安保戦略的関係について話したいと思います。

 これについては戦略的な変化が現れていますが、まだ不十分です。日本との戦略的関係は難しい。というのも中国は日本の経済のパートナーでありながら事柄によっては競争国であり、それは有意義なことでもあります。そして軍事的な脅威になっていることは否定できません。この報告から見ると、これは中国の位置づけを日本の多重的安全保障戦略の一環だと言っています。しかし必要なのは国際的メカニズムに引き込むことであり、協調しないことのコストを理解できるように日本は働きかけるべきです。

 日本はアジアの多国間安保の架け橋になるかもしれませんが、その一方で「友愛」とはずれのある報告がなされています。報告ではMDなどにも触れていますが、防衛システムについては中日双方の利益も考えてほしい。民主党が特色あるシステムを構築するのは難しいことでしょうが、日本国際安全システムが出した報告の中で「消極的平和主義から積極的平和主義にしなければならない」というものがありました。報告の中では、同盟国との協力・地域との協力・国連などがあります。また中日両国には海上交通について協力することを期待します。ソマリアの海賊も大きな問題です。

 東アジア・環太平洋の協力については非常に間接的なことだと思いますが、ここで非建設的な主導権の奪い合いは望ましくなく、一つでも要素が欠ければ東アジア共同体の構築は不可能です。これは戦略的な交流になるべきでしょう。以上です。

親カテゴリ: 2009年 第5回
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