. 言論NPO主催「東京-北京フォーラム」公式サイト - 2009年開催 第5回

安全保障対話①(前半:基調報告)

呉 江浩氏 (中国外交部アジア司副司長)

 中日間の関係はより高いレベルになっていると思います。その中で将来を分析するには次のことを踏まえることが重要です。

 温家宝首相はこの間北朝鮮を訪問しましたが、北朝鮮の六カ国協議に対する態度の変化があります。六カ国間の関係は改善しています。また北朝鮮には日本の民主党と協力したいという意向があるといい、「友愛」など外交面において積極的なメッセージを送っている日本の新政権は積極的に評価できます。

 鳩山総理はアジアの中でどのように協力していくかということを述べていますが、談話を見ると北東アジアを重視しているように見えます。日本とアジアの隣国の関係はその中でもより重視されており、他にもアメリカの訪中は両国の関係を良い方向に導いていますし、ロシアとの関係もそうです。同じように、中国との関係も良い方向へ進展しているのです。以上が積極的な面です。

 もう一つは北東アジアの問題です。歴史を振り返ると、対話と協議が安全と発展に対する最も重要なものとなっています。相互信頼と安定的平和的なやり方が諸国に求められています。相互に支援し、文化的に参考しあうというのは有意義なことであって、現在そして未来において、次の四つの点で強力を強めることが出来ます。

 第一が信用メカニズムの構築であり、第二が経済協力の強化です。第二の点はインフラの建設促進、エネルギーや環境問題への取組がその典型です。第三の点として挙げられるのが北朝鮮の核問題であり、北朝鮮と韓国、日本と北朝鮮の関係改善に努力することです。特に重要なのは北朝鮮を非核化させることです。第四の点は文化的交流を盛んにすることです。国民感情を理解し合うことが重要であって、中日韓の複雑な感情問題についても話し合うべきでしょう。これらは努力して解決すべきです。

 特に中日関係について言うと、中国と日本は北東アジアの重要な国家同士であり、北東アジアの情勢は両国の将来に繋がっています。ですから、中日は北朝鮮の発展の方向性を把握する必要があります。これについては5つの点でお話しします。

 第一が、互いに平和発展をサポートすることです。日本はアジアのために貢献していますし、これは時代の流れにも適合しています。中国は60周年を迎えて各分野で成果を上げましたが、中国は地域の安全とさらなる発展のためにその力を発揮したいと考えています。

 第二が、中日のさらなる交流拡大です。今月の8日、ある部署が団員を率いて民主党と与党間の交流が行われるよう提案しました。中日間は金融危機への対策を考える上で協力することが大切ですが、その持続性が今後の課題となります。新たな地域との交流も視野に入れる必要があります。

 第三が、「中日韓」の交流拡大です。中日で人的往来は多く、当初人々が考えたレベルを超えています。今後は中日韓の交流についてもそのような拡大が必要です。

 第四が、日米中のバランスの取れた関係です。これは諸国の利益にも繋がることです。中国が中米関係の親密化によって日本を疎外することはありえませんし、同時に日本と手を結びアメリカの力を弱めるつもりもありません。冷戦時の協力というだけで日米だけが継続的に発展するのは望ましくありません。

 第五が、北朝鮮についてです。北朝鮮との間に良好な関係を結ぶことが重要ですが、その中で北朝鮮がチャンスをつかみ、問題解決に積極的になってほしいと思います。日本の努力にも期待します。

若宮啓文氏(朝日新聞社コラムニスト)

 1点確認したいのですが、日米のところで「日米同盟の継続発展は好ましくない」と言われたのでしょうか?

呉氏

 違います。干渉することはありません。特に防衛問題に関係しますが、第三者を侵害することのないようにと思っています。

藤田 幸久氏(参議院議員、民主党国際局長)

 午前中に大連に来た話をしましたので、今度は民主党の外交・防衛政策の基本をまずお話しします。これについては大掃除をしているところですが、基本的な考えとしてあるのは、日米の関係を新しい時代のものとすることです。米軍再編などについては引き続きやりますし、アジアについては信頼醸成に全力を挙げます。また東アジア共同体では域内の協力を推進します。

 日中両国間では、人権やエネルギーなどについては建設的な話し合いによって解決を目指します。特に北朝鮮の非核化については中国に期待しています。12月10日からは民主党の代表団が訪中しますが、鳩山政権は歴史の直視と様々な歴史問題の解決をしています。村山談話や靖国問題がそうです。また西松建設は過去に強制連行をした話で、2億円以上の和解金を払うなどの動きを見せています。岡田外相は大臣になってすぐ密約の調査報告を出させましたが、外交文書の検証は重要です。こうした検証がなければ外交安保の評価が出来ず、ビジョンの策定も出来ません。個人的な見解ですが、この分野では新しい視点が必要です。

 日米安保については、米軍基地、西側への展開を認める、日本は戦力を認めない、という3つの合意があります。現段階ではこれに意味があるのでしょうが、日本は国連憲章を守る必要があり、それを逸脱するアメリカの行動に追従するのは避けるべきです。中国・ロシアに対してMDなどは実効的でないことを認識すべきです。

 東アジア共同体については午前に述べたとおりです。核廃絶については使用した経験のある国に対してCTBTへの加盟と発効までの核実験のモラトリアムを求めると共に、NPTへの加盟を求め、さらに核不拡散検証技術を提供します。北東アジアの非核化については中国の指導力に期待します。核兵器廃絶の決議は国連安保理で賛成多数で、アメリカ・イギリス・ロシアも賛成したといいます。中国は棄権したといわれていますが、こうした流れは強めたいと考えています。

 もう一つ重要なのは、安保についての考えが広くなっていることです。国連のPKOや地球環境、貧困、途上国支援など、それぞれの国が得意なやり方で貢献することが期待されます。日本が中国から学ぶべきなのは国連PKOを増やすことで、これは鳩山総理にも申し上げました。中国は2000人くらいですがほぼ非戦闘部隊で、これに対して日本は40人足らずです。日中はかつて漢字や技術を学び合ったように、現在再び互いに学び合う可能性が増えてきています。インターネットのルールを作った上で互いに良いところを伸ばしあうことが今後は必要でしょう。以上です。

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